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つまり、T株を買った人は、知らず知らずのうちに、Tの短所やHの長所を軽視するようになります。
そうすることによって、認知的不協和を軽減しようとするのです。 あるいは、Tの長所やHの短所をことさらに強調しようとします。
心の中の不協和を軽減するために、選んだ選択肢に対する態度をよりはっきりとさせていくわけです。 T株の購入を決定すると、認知的不協和を軽減するために、Tに対する評価を心の中で高めていくというバイアスが発生してしまうのです。
要するに自分の株に惚れてしまうわけです。 そうやって自己の行動を正当化する心のバイアスをわたしたちは持っています。
ちなみに、行動経済学を研究しているR・H・Sは、人々があるものや状態を実際に所有している場合には、それを持っていない場合よりも、そのものを高く評価することを発見し、「保有効果」と命名しています。 わたしたちは、株を買ってしまうと、その株の価値を高く評価してしまうのです。
この心のバイアスが生じると、こういうことも起こってしまいます。 自分の読みが外れて、株で損をしたとしましょう。
本当は株を上手に売買して大もうけするはずだったのですから、認知的不協和理論でいうと、自分の読みと株の損は、認知的不協和の関係にあります。 この場合、多くの人は発生した不協和を回避するために、「マーケットがまちかっている」と自己を正当化するか、「この損はいずれ解消される」という楽観論に立つことになります。

どうでしょう。 思い当たることはありませんか。
いずれにしても、「最終的には自分の読みが正しいということが証明されるはずだ」という思い込みを正当するために、取引を続けることになりがちですから、さらにポジションを膨らませて損失の一発解消を狙うことになります。 もう少し運が良ければ、あるいはもう少しタイミングがよければ、次はうまくいくはずだと思い込むわけです。
そして、全財産をも失いかねない損失を生み出していくのです。 わたしたちは成功したとき、それを「自分自身が正しい判断をしたから」と理解しがちです。
一方失敗したときは、それを自分の能力不足のせいにはせずに、「努力が不足していた」と理解するのです。 だから失敗にめげずに何度でも挑戦したりします。
プレーヤーとしての資質にすぐれている人ほどそうなるのです。 その結果、どうなるでしょう。
成功したら自尊心を満足させて増長し、失敗すると自尊心を擁護するために言い訳を探そうとします。

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